こんにちは!INUMESHI店長のもんどです!
男の子のわんちゃんを飼っている場合、一度は耳にするのが「去勢手術」です。
近年、愛犬の去勢手術を行う飼い主さんが増えていますが、やはり「手術は心配」「去勢手術をするのは可哀想」と思われる飼い主さんもいらっしゃるのではないでしょうか?
僕も愛犬の去勢手術の話が出た時に、家族が「去勢手術をするのは可哀想!いつか子供がほしい!」といって去勢手術をしませんでした。
ですが、去勢手術をしていなかったせいか成長するにつれ、発情したメスに興奮したり、マーキングなどの行動が目立ち始めました…
去勢手術の話を聞いた際、手術は可哀想と思いましたが病気の予防になることも知り、家族と話し合い去勢手術をする!と決めたことがあります。
手術は問題なく終わり、その後は発情中のメスに興奮することもなくなくなり、マーキンングも改善されました。
もちろん手術になるのでリスクもありますが、わんちゃんや飼い主さんにとってもメリットもあります。
どのような手術なのか、いつ頃したらいいのか、メリットやデメリットなどを知っておけば、本当に愛犬に去勢手術をする必要があるかを飼い主さん自身が選択することができます!
今回は、去勢手術のタイミングやメリット・デメリットについてご紹介します。
去勢手術とは?
去勢手術とは、外科的処置でオスの精巣を摘出する手術です。
全身麻酔をかけて精巣付近の皮膚を切開し、中の精巣だけを取り出します。
メスの避妊手術とは異なり、お腹を開かずに手術することができるため、身体に対する負担は避妊手術より少ないといわれています。
去勢手術を行うことで男性ホルモンの分泌がなくなり、オス特有の病気予防や行動、ストレスなどを軽減することができます。
去勢手術はいつ頃するべき?
去勢手術は生殖能力が完成する前の生後6ヶ月頃に行うのが理想的です。
一般的に大型犬よりも小型犬の方が性成熟が早く、7〜9ヶ月頃に性成熟するといわれています。
大型犬や超大型犬は1歳前後と小型犬よりも少し成熟は遅くなります。
性成熟が始まると自分より弱い個体に乗ったりするマウンディング、縄張り意識をして足を上げてマーキングするなどの行動が見られます。
他にもメスの発情に興奮しやすくなるため、性成熟に達する前に手術を行うことでこういった問題行動を起こしにくくなります。
もちろん今まで去勢手術をしていなかったわんちゃんが、これから行ってもOKです。
高齢になるほど身体への負担がかかる可能性がありますが、健康で持病などなければ麻酔へのリスクは低くなります。
一番重要なのは年齢よりも、手術をするわんちゃんが健康であるかということになります。
ただしある程度の年齢になってから手術を行ってもマーキングなど問題行動が習慣化していると改善が見られない可能性があったり、前立腺肥大などの病気になってからでは遅いので、出来るだけ早く去勢手術をするのがオススメです。
子犬の場合、手術のタイミングはそれぞれの獣医師の考えや、成長にもよって異なります。
かかりつけの動物病院とよく相談して予定を立てましょう。
去勢手術のメリット
去勢手術を行うことで、以下のメリットがあります。
- 病気の予防
- 性ホルモンの影響による攻撃性の改善
- マーキング・マウンティングが減る
- ストレス軽減
- 望まない繁殖を防げる
順番にご紹介していきます!
病気の予防
精巣を取り出すため、生殖器の病気にかかり可能性が減ります。
・前立腺肥大
・精巣腫瘍
・肛門周囲腺腫
・会陰ヘルニア
それぞれの病気について解説していきます。
・前立腺肥大(ぜんりつせんひだい)
前立腺肥大は、去勢手術をしていない場合、最もなりやすい病気になります。
特に7〜10歳以上の高齢犬によくみられます。
前立腺とは、膀胱の下にあるオス特有の生殖器で、この前立腺が大きくなることにより、膀胱を圧迫して尿が出しづらくなったり、便秘などの症状がみられます。
また、前立腺炎や前立腺に膿がたまる前立腺膿瘍などが起こると、痛みや発熱、血尿などがあらわれ緊急性が高くなることがあります。
・精巣腫瘍(せいそうしゅよう)
去勢手術をしていない場合、2番目に多い腫瘍です。
精巣が腫瘍化することにより起こり、精巣腫瘍は「セルトリ細胞腫・精上皮腫・間質細胞腫」の3つに分類されます。
通常、生後30日前後で精巣が陰嚢に降りてきますが、まれに精巣が片方、もしくは両方降りてこない状態の「陰睾」または「停留睾丸」になるケースがあります。
遅くても生後8ヶ月前後までに降りていない場合は、その後降りてくる可能性も低くいと考えられ、正常な精巣に比べ腫瘍化するリスクが10倍以上といわれています。
・肛門周囲腺腫(こうもんしゅういせんしゅ)
肛門周囲腺が腫瘍化したもので良性腫瘍です。
肛門には、周囲に肛門周囲腺という分泌腺があり、男性ホルモンが腫瘍の発生に大きく関与しているといわれています。
腫瘍の程度によって皮膚の潰瘍化、出血、化膿などを引き起こすことがあります。
また、さらに進行すると排便障害(便が出にくい)などの症状が現れる場合があります。
・会陰(えいん)ヘルニア
肛門周囲(会陰部)にある筋肉が萎縮して隙間から、直腸や膀胱、前立腺などの臓器が飛び出ます。
筋肉が薄くなってしまう原因に男性ホルモンが関与しているといわれ、肛門をはさんで両側性に発生することが多いですが、片側のみに発生する場合もあります。
多くの場合、腸管が飛び出るため、排便がしにくくなったり、膀胱や尿道などの場合、排尿困難や尿がでない等の症状が現れます。
どの病気も男性ホルモンが関与していることが多く、去勢手術をすることにより病気を予防することができます。
性ホルモンの影響による攻撃性の改善
個体差がありますが、性ホルモンの減少やストレス軽減の影響で性格が穏やかになり、オス犬特有の攻撃性が改善するといわれています。
ただし、攻撃性については犬の性格によるところも大きく、去勢することで必ずしも攻撃性がなくなるわけではないので注意してください。
マーキング・マウンティングが減る
性成熟が始まると、男性ホルモンにより縄張り意識が芽生えるため、オス犬特有のマーキングや足上げオシッコ、自分より弱い個体に乗ったりするマウンティングをします。
成熟のはじめのタイミングで手術すれば、ホルモンの分泌が抑えられてマーキング行動は収まることが多いといわれています。
ただし、すでにマーキングを行っている犬は、その行動を学習してしまっているため、去勢手術のタイミングによってはマーキングが治まらない可能性があります。
また、マウンティングは遊びやコミュニケーションの一種として行われることもあるため、メス犬に発情しなくなったとしても、行う回数がなくなるわけではないと覚えておきましょう。
ストレスが減る
去勢をしていない場合、交尾欲や他のわんちゃんに対する攻撃性、縄張り本能などさまざまなストレスを感じやすくなります。
オスには定期的な発情サイクルはありませんが、発情中(ヒート)のメスのニオイに性的興奮を起こし、発情中のメスを追いかけたり、マウンティングなどの性行動を行うことがあります。
繁殖させるなら問題ありませんが、発情しているのにメスと交尾できないという状態は、オスにとって強いストレスとなってしまいます。
去勢には性ホルモン(男性ホルモン)を減らし、発情したメスに性的興奮を起こさせなくする効果があるため、交尾できないことによるストレスを回避することができます。
望まない繁殖を防げる
飼い主さんの望まない繁殖を防ぐことができます。
万が一、脱走してしまったり、ドッグランなどで誤って女の子と交尾してしまう、という事故を防ぐことができます。また、多頭飼いの場合にも安心です。
去勢手術のデメリット
去勢手術を行うことで、以下のデメリットがあります。
- 肥満になりやすくなる
- 全身麻酔のリスク
- 子どもを作れない
- 性格や被毛の変化
順番にご紹介していきます!
肥満になりやすくなる
去勢手術をすることでホルモンの影響により運動量が減るため、身体の代謝が落ちてしまいます。
エネルギー要求量は、約3割ほど落ちるといわれていますが、性欲が少なくなると本能的に食欲が増してしまいます。
つまり、代謝は落ちて太りやすくなった身体なのに、食欲は増しているという状態です。
そのため、去勢手術後のわんちゃんは「太りやすくなる」といわれています。
全身麻酔のリスク
去勢手術は、全身麻酔をかけおこなします
残念ながら全身麻酔にリスク(副作用)ゼロはありません。
ですが、手術を行う前に必ず検査を行い、麻酔をかけてもいい状態なのか確認をします。
行う検査は血液検査、年齢や状態によりレントゲン撮影やエコー検査があります。
手術自体の時間は30分程度ですが、麻酔を入れてから完全に覚めるまでは、おおよそ1時間ほどかかること多いといわれています。
子どもを作れない
去勢手術により生殖するための器官を取り除くため、子供を作ることができなくなります。
将来愛犬に子犬を産ませたい場合は、慎重に検討する必要があります。
性格や被毛の変化
去勢の手術後は性格がおとなしくなる、落ち着くといわれています。
そのため、もともと大人しい性格の犬が、去勢後に自信を無くしたり、さらに臆病になってしまう可能性があります。
また個体差はありますが、ホルモンバランスの乱れによって毛づやが悪くなる犬もいます。
毛質や毛色が変化するケースもまれにあります。
手術について
手術の流れ
避妊手術はどのように行われるるのか流れをご説明します。
1.問診、検査
手術を行う前に健康診断を行い、健康状態、年齢、体格、時期などによって適した手術の日を決定します。
場合によっては術前の血液検査をすることもあります。
また、健康診断と一緒に手術当日の流れや麻酔なので説明をあるので、分からないこと疑問に思ったことは確認しましょう。
2.手術前日
全身麻酔時の吐き戻しなどを防ぐため、12時間以上の絶食が必要となります。
お水は与えても問題ありません。
手術の時間によって最終の食事時間が異なるため獣医師の指示に従ってください。
3.手術当日
基本朝食は抜いた状態で病院へ行き、わんちゃんを預けます。
4.手術
麻酔薬を用いて全身麻酔をかけ、お腹の毛をそり、消毒をします。
オスは精巣と精巣上体が納まっている睾丸を摘出します。
包皮と陰嚢の間の正中線の上を1〜1.5cmほど切開し、ここから摘出するのです。
手術時間は30分〜1時間ほどになります。
5.手術後
手術が終わったら呼吸、心拍、体温などの状態を観察し、麻酔から覚め、しっかり立てるようになるまで入院室で管理します。
去勢手術の場合は、切開する範囲が小さいため日帰りが可能な場合が多いですが、停留睾丸などで開腹手術を行なった場合は、1泊入院となるケースがあります。
6.抜糸
手術から1〜2週間後に傷の状態を見て、抜糸を行います。
病院によっては、吸収糸(溶ける糸)を使用しており、抜糸が不要な場合もあります。
手術後に気をつけたいこと
・手術当日
日帰りが可能な場合は自宅で食事を与えますが、手術当日の夕食は普段の3分の2程の量を与えるようにしてください。
全身麻酔をかけるために絶食をしている場合、お腹の中が空っぽの状態のため、急にたくさんの量を食べてしまうと嘔吐や下痢などの症状が見られます。
水分補給や胃に負担をかけないようにするために、ドッグフードをふやかしたり、レトルトを与えることもオススメです。
手術後のわんちゃんは元気がなくなり、食欲も落ちる場合が多いといわれています。
食事を欲しがらない場合は無理に食べさせる必要はありません。
また、お散歩などの運動も極力控えて、安静に過ごすようにしましょう。
▼ドッグフードのふやかし方の記事はこちら
・翌日〜抜糸まで
翌日以降は、わんちゃんの状態を見て食事の量を調節しましょう。
今まで通り、食欲も出て元気があるようならいつもの食事量を与えても良いでしょう。
まだ食欲がないようでしたら、引き続き量は少なめにして与えてください。
一般的に食欲が落ちるとともに2〜3日元気がなくなるわんちゃんもいます。
排泄も問題なく、食事も少し食べているようなら問題ありません。
絶食をしている場合、便も2〜3日でないこともあります。
嘔吐・下痢や元気がない状態が3日続く場合は、すぐに病院に連絡するようにしましょう。
愛犬が傷口を気にして舐めてしまうと、菌が入って化膿したり、傷口が開いたりしてしまうことがあります。
去勢手術の場合、抜糸までエリザベスカラーや手術後服で傷口を保護します。
エリザベスカラーは首に巻くため、わんちゃんによっては食事が食べずらかったり、嫌がってしまう場合があります。
その場合は、手術後服を着せてあげたほうがストレスが軽減されます。
また、散歩や運動に関しては、いつ頃から行けるかは獣医師によって意見がことなるので、病院に確認してみましょう。
一般的には、抜糸までは過度な運動は避け、術部に強い衝撃が加わらないようにしましょう。
傷口が膿んだり、傷口が開くと腹膜炎を起こしたり、再手術が必要となる場合もあるので、すぐに獣医師に相談してください。
・抜糸後
抜糸をしてから3日間ほどは、傷口の様子を確認しましょう。
わんちゃんが傷口を気にして舐めてしまったりすると、炎症を起こす可能があります。
また一般的には、抜糸後の2〜3日からシャンプーが可能となります。
溶ける糸の場合、抜糸はありませんのでいつ頃シャンプーをしていいかは動物病院で確認しましょう。
・ドッグフードの変更や給与量の見直し
精巣を摘出したことによりホルモンの影響により、エネルギー要求量が3割ほど落ちるといわれています。
性欲が少なくなることで本能時に食欲が増加したり、今まで食べていた食事量でも太ってしまう場合があります。
そのため、去勢手術後はドッグフードを変更したり、給与量を見直して肥満にならないように予防しましょう。
▼去勢手術後のフードの変更の記事はこちら
▼給与量の計算方法の記事はこちら
手術費用はどれくらい?
去勢手術の費用は、2〜5万円程といわれており、わんちゃんが大きくなるほど金額も高くなります。
こちらの費用には、手術代、術前検査代、手術中に使用した薬剤代、麻酔代が含まれている場合が多いでしょう。
病院によって入院費、退院時に処方される薬代、抜糸などが含まれていたり、別途かかることもあります。
乳歯が残ってる場合
乳歯が残っている場合は、去勢手術の時に一緒に抜かないかと提案されるケースがあります。
通常、わんちゃんは7ヶ月ほどで乳歯から永久歯に生え変わります。
乳歯が残っていると歯並びが悪くなったり、歯周病の原因にもなります。
生後7ヶ月を過ぎても残っている乳歯は自然に抜けることはほとんどありません。
抜歯をする際は全身麻酔が必要となるため、去勢手術と合わせて行うことがオススメです。
費用は、歯を抜く本数によって異なりますが、去勢手術とは別に2000〜7000円ほどかかります。
詳しい費用は、動物病院によって異なりますので、かかりつけの動物病院に問い合わせましょう。
補助金や助成金が一部でる地域も
意外と知られていないのが、一部の地域では補助金や助成金が出る自治体があるということです。
こちらは、捨て犬や捨て猫問題への対策から取り組まれるれており、住んでいる地域の市区町村が、去勢手術に対しての費用の一部を負担してくれる制度となります。
自分の住んでいる地域が補助金や助成金の対象かは、近くの市役所などに問い合わせて確認してみましょう。
まとめ
去勢手術は、何歳で行っても構いません。
ただし、生後6ヶ月〜1年まで去勢手術を行うとマーキングやマウンディングなどの行動が軽減する可能性は高く、早めに行うことで病気予防の効果もあります。
去勢手術にはメリットとデメリットもありますが、飼い主さんと愛犬がストレスなく過ごすためにはメリットが大きいといえます。
ですが、最終的に手術をするかしないかを決めるのは飼い主さん次第になります。
手術と聞くと不安もあるかと思いますが、心配な場合はかかりつけの動物病院に相談してみましょう。